件数評価の弊害

夜中は全く動作が止まっているに等しい状態のココログですが、この時間帯はまだましのようです。ということで、ささっと書き込んでしまいます。

このところ、療養中であることを忘れてしまうほど、仕事が立て込んでいました。ほぼ1週間間隔で米国の拒絶理由通知(OA)の対応が3件、その合間を縫うように、複数の担当部署から他社特許の検討依頼および自社の構成との関係確認、知財部責任者の合同会議での報告資料の作成、新規代理人との面談・トライアル案件の評価、既出願案件の再評価、自部署のメンバーの出願・中間処理の原稿チェック…。優先順位をつける間もなく、来た仕事に片っ端から手をつけていくという感覚でした。

実のところ、一番時間をかけているのは、自部署メンバーの教育です。最近新しく中途採用でメンバーを増員してもらいました。ある程度知財経験があり、能力も意欲もある20代の人ですので、将来が楽しみですが、まずは担当する技術に慣れるために部署の他のメンバーにも協力してもらいながら、技術教育。ちょうど新入社員に対する社内の技術教育のプログラムが行なわれているのでそちらにも飛び入りで参加してもらったり…。

私見ですが、知財部員としては、技術者と対等のレベルで話ができる程度に技術を理解してもらう必要があると考えています。そうでなければ、技術者が書いた発明提案書に書かれている実施例レベルの発明を思想として抽出することは難しいです。過去の自社出願の内容を見ても、実施例レベルの発明をそのままクレームしたものがいかに多いことか。実施例をクレームしただけのものは、他社にとってみれば回避可能であり、特許としての価値に乏しいものがほとんどです。

出願件数だけで知財部員の能力を評価すると、このように発明提案書をちょっと読んだだけでさっさと実施例レベルのクレームを作って内容の薄い出願を数多くうった人が高い評価を得ることになりがちです。呻吟しつつ発明思想を抽出して上位概念化したクレームを作成し、さらに先行技術を予想して明細書に先回りで減縮事項をちりばめておく。そのような出願は、数多くうてるものではありませんので、出願件数評価では低くなりがちです。どちらの特許が自社の重要技術を他社の侵害から守ることができるか、私は間違いなく後者だと思うのですが…。

ただ、このように工夫を凝らして出願しても、担当者が変わると全くその工夫に気づいてくれずガックリすることもたびたび。拒絶理由が来たときに拒絶を受けなかったクレームだけ残して、後はさっさと削除してしまったり…。“こう言って来たら明細書のこの部分を引用してこう言い返せ”と指示書を包袋に残しておこうか、と半分本気で考えています(苦笑)。