初心に立ち返る

研究者から知財部に異動になったときに書いた文章が見つかりました。ある人と知財部員の資質を論じた文章ですが、自分が知財部に来た動機や希望が書かれていました。それから数年後の今の自分を振り返ってみると、まだまだその域には達していません。初心忘るべからず、もう一度原点に立ち返りたいと思います。

知財部員に必要な資質としては以下のようなものを挙げたいと思います。

  • 好奇心旺盛でいろいろな技術が好き
  • 理解できるまであきらめないねばり強さ
  • 人と話すのが苦にならない
  • 文章力がある

上述の資質は互いに相乗効果があり、組み合わさると予想のできない効果を生み出すことがあるように思えます。

私の例で話をします。発明者である私が自分の発明を具体的な言葉で表現できずに困っていたことがありました。従来と比べて良い結果になったのだけれども、従来とどこが違うのかうまく説明できない。そんなとき担当してくれた知財部員が上記の資質の持ち主でした。彼は、私の話を何度も繰り返しては聞き、先行技術も色々と調べて、絡まった糸を解きほぐすように一つ一つ私の発明との違いを明確にしてくれました。そして、本質を的確に捉えて鮮やかにクレームにドラフトし、的確な文章で従来技術との対比の中で私の発明を際だたせてくれたのです。

できあがった明細書を見たとき、実に爽快な気分だったことを鮮明に思い出します。自分の発明が思っていたよりもずっと汎用性のある内容に拡大され、言いたかったこと、いやそれ以上の内容が書かれている。何と言ったらよいのか、自分のやってきた技術開発が、発明というカテゴリの中でロゴス化されて実体化し、過去から未来につながる技術の連環に組み込まれたのを感じた瞬間とでも言えばいいのでしょうか。私も知財部員となったからには、発明者に対してこういった感激を与えられるようになりたいと思います。成功するかどうかはこれからの精進次第です。