検査入院記録(入院2日目)

以下のエントリは退院後記憶にもとづいて書いたものです(3月16日記載)
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朝5時半に目覚める。いつもより1時間ほど早いが、睡眠時間7時間でほぼ頭もすっきりしている。廊下側のベッドなので外の様子はわからないが窓の外はかなり明るく、春がすぐ近くまで迫っていることを感じさせる。

同室のSさん、Nさんももう起きておられる気配だが、まだベッド周囲のカーテンが閉まっているため、大きな音を立てないようにゆっくりと洗面所に向かい、洗面・歯磨きを済ませる。
一階に降りて外来待合室の自販機で新聞を購入。病室に戻りお茶を啜りながら紙面に目を通す。民主党は永田議員の偽メール問題で苦境に立たされつつあるようだ。トリノオリンピックは相変わらず結果が出ていない。前回のリレハンメルオリンピックで銀1銅1という結果だったのだから、こんなもんかとも思う。あと残るのは女子フィギュアだけだが、どうせマスコミが騒いでいるだけだろうから全く期待できない(後記:荒川さんがあれほど活躍するとは予想の範囲外でした)。

ガタゴトという音とともに食事を運ぶワゴンを押す音がする。時計を見ると7時少し前。朝食の時間だ。ナースが運んできたパン2個と低カロリーのマーマレード、牛乳だが、これは以前入院していたときとほとんど変わらない。パンは無塩パンという種類のものらしく、ほのかな甘みがある。一般的なパンにおいては発酵過程で塩を加えるため約2%弱の塩分を含んでおり、これを入れないと味や風味が著しく落ちるらしいのだが、舌の鈍い私には全く問題ない。

食事を終えてトレーを廊下においてあるワゴン車まで運ぶ。帰りしな、見覚えのある人が隣の病室に入っていくので、病室の入り口のネームプレートを確認すると、前回入院したときに隣のベッドだったTさんである。私と同年代の方で、腎臓が悪くて2ヶ月にもわたって入院しておられた。私が退院する一週間ほど前に数値が良くなったということで退院していかれたのだが…。また悪くなったのだろうか。
部屋に戻るとNさんとSさんが雑談している。病気のことから政治、家族のこと、どこぞのパチンコで12万円勝った話…。自分のベッドに横たわってうつらうつらと聞くともなしに聞いていた。

9時頃、朝の回診で主治医のN先生が来られた。女性の心臓内科医である。女性の年齢はよくわからないが30代半ばといったところだろうか。前回治療を受けたときの主治医がレジデントで外来診療の担当医ではないため、このN先生に引き継いでいただいたのである。N先生には身障者手帳の取得では大変お世話になっており、いつもこちらの言うことに真摯に耳を傾けて下さるので感謝している。今日と明日の予定を話していかれた。今日は検査とカテーテルのための剃毛の予定。検査は心エコー検査とトレッドミル心電図検査である。

10時頃、ベッドで本を読んでいたところ、心エコー検査に行くようにとの連絡が入る。2Fの生理機能検査室に行ったところ、外来患者で非常に混んでいたが、すぐに名前を呼ばれ、心エコー検査に入った。横向きに寝たまま心臓周辺に超音波プローブを当て、心臓の様子を観察する検査である。プローブを胸に当てるのだが、ところどころ痛みを感じる場所がある。気のせいなのだろうが、何か気持ち悪い。

心エコー検査が終わって病室へ帰ろうとしたところ、トレッドミル心電図検査も受けていってください、とのこと。主治医のN先生の立会いのもとで検査を開始した。壁際にベルトが動く健康器具のようなものが設置されている。これがトレッドミル検査の機械である。上半身裸になり、電極と血圧計を取り付けた状態で、ベルトに乗り、先生の合図でベルトが動き始めた。健康器具でこんなの有ったな、と思いながらベルトの上を歩く。思ったよりも動きが早く、かなり大股に歩く必要がある。途中でベルトの速度が上がり、次の段階ではベルトの前方が上方に持ち上がり、ちょうど上り坂のような状態になる。横でN先生がモニタに映し出される心電図を見ているが、異常があるのかどうかはわからない。数分に1回血圧計が稼動するのだが、最初は120-80くらいだった血圧が150-100くらいまで上がる。脈拍もだんだんと上がり当初90くらいだったのが150くらいに達した。以前退院したときに脈拍が100以上になるような運動は避けるように言われていたが、大丈夫かな、などと思っていたが、胸の苦しさもなく、最後までついていくことができた。“もう終わりましょう”というN先生の合図でだんだんとベルトがスローダウン。準備されていた汗拭き用のタオルで汗をぬぐう。久しぶりに気持ちの良い汗をかいた。
電極を付けたまま安静にして座って状態を保つ。運動後、どの程度で元の状態に戻るか調べるのである。モニタを眺めていたところ、脈拍が面白いように下がっていくのがわかった。脈拍はどうやって測っているんだろう。原理的には2回測定すればその間隔から1分間の脈拍がわかるはずだが、誤差が大きいからやはり数回測って平均しているんだろうか。などととりとめなく考えていたところ、脈拍が100を切り、検査が終了。

病室に戻ったところ、ちょうど向かい側のベッドに入院した人がおり、夫婦で挨拶していかれた。40代後半くらいの方であり、何処が悪いのかよくわからないらしいが体が全く食事を受け付けないということで、点滴から栄養を補給している。

昼食後、本を読んでいたところ、ナースが剃毛のためかみそりを石鹸を持って現れた。鼠径部からカテーテルを導入するため、あらかじめ鼠径部の陰毛を剃っておく必要がある。この病院では通常は右足の付け根の部分からカテーテル挿入を行うが、うまくいかなかったときのため、左足の付け根の鼠径部も同時に剃毛する。ナースとはいえ若い女性の前で下着を下ろすのは気恥ずかしいのだが、“どこに住んではるんですか?”とか、色々話しかけられ、雑談しているうちに済んでしまった。絶妙である。私の次に、隣のNさんのところに行って剃毛していたようだが、同じく“どこに住んではるんですか?”との質問が聞こえてきた。毎回この技を使っているに違いない、と確信した。

夕方、入浴を終えて帰ってきたところ、妻が着替えや新聞を持ってきていた。ちょうどよいタイミング。入浴で出た洗濯物を持ち帰ってもらうことにした。妻とのんびり話をしていたところ、今日の昼の心エコー検査とトレッドミル心電図検査の結果についてN先生が説明に来られた。心エコー検査では、心臓の一部が動きが悪くなっているがこれは以前と同じ、またトレッドミル心電図検査では異常はないということであった。明日の検査を見るまではハッキリわからないが、悪くなっている兆候はないということで、少し安心した。妻も安心して帰っていった。

夜、薬剤師が来た。現在服用している薬について説明するためだが、私が自分の薬の名前と効能を全て知っているのを知り、驚いていた。というか、自分の飲む薬を知っておくことは当然のことだと思うのだが…。バイアスピリン、レニベース(エナラプリル)、アムロジン、ラシックスタケプロン、シグマート(ニコランマート)。この半年間飲み続けた薬である。さすがに薬価までは覚えていないけれど。
ところでカテーテル検査の前には眠れなくなる人もいるらしく、睡眠薬を1錠置いていった。前回のときも今回も睡眠薬は必要なく、ぐっすりと眠ることができた。