近所の内科

今年の6月頃、自宅から歩いて5分のところに内科・循環器科専門の個人病院が開院しました。入院してカテーテルによる再還流を受けた公立病院は車で2~30分の距離ですので、気軽に行けるところにはありません。

以前、心筋梗塞になるまで通院していた個人医院は、土日もやっていて便利だったのですが、心筋梗塞膵臓炎と誤診されて、入院が1週間遅れてしまったことを考えると、どうしても行く気になりません。心筋梗塞の症状は誤診しやすいので、仕方のない部分もあります。しかし、そのとき受けた血液検査で心筋壊死特有の酵素が検出されていたにもかかわらず、検査3日後に自宅の留守電に、“検査結果を聞きに来るように”との味も素っ気もない連絡が入っていただけというのがどうにもやり切れません。こちらとしては大変な事態だということがわかりませんので、“次の休みのときにしよう”と放っておいたところ、結果を聞きに行く前に、狭心症の発作があり、心筋梗塞が発覚しました。入院後、カテーテルを行なう時期を決めるため、梗塞が起こった時期を特定する必要があり、検査結果をFAXしてもらって、約1週間前の発症を確認できました。まともな医者なら検査結果を見た時点で何としても患者をつかまえるようにすると思うんですが…。

さて、今回開院した個人医院は、自宅の近くで気軽に通える循環器科なので気にはなっていました。なかなか行く機会がありませんでしたが、先日風邪をひいたのを機に行ってみました。平日の夕方ですが、待合室は誰もいません。初診のためアンケートに記入。当然ながら、既往歴についても記載しました。先生は、40代中頃の男性の医師で、後でネットで医師名を入れて検索したところ、以前は大きな総合病院の内科の勤務医をされていたようです。職場の健康診断の結果や心電図、薬の処方箋などを一式持っていったので、私の状況についてもよく理解していただけました。当然というべきか、風邪の症状よりも私の心筋梗塞の症状やその前後の症状について、非常に熱心に聞いていただき、心臓の模型などを手に今後気をつけなければならない症状やふだんの生活について詳細にアドバイスをいただきました。

今回新しい知見だったのは、水分についてです。摂り過ぎも不足もダメということです。水分を摂らないと血液が固まりやすくなるのではないか、と考えて、多めに摂るようにしていたのですが、心臓の動きが悪くなっているため、摂りすぎると体内から排出されなくなる可能性があり、排出されなくなると悪循環でどんどんと、手足のむくみ、さらには心臓が肥大してくる可能性がある、ということです。心臓が肥大すると、心臓の内部での電気回路に異常を来たして、不整脈や心房細動が起こる可能性があり、それがいちばん怖いということです。例えば、長嶋監督の脳梗塞不整脈の一種である心房細動が一過性に起き、これに伴い心臓の中に血液の塊ができ、それが脳の血管を塞ぐ脳塞栓となったもので、心臓の病気が脳梗塞の原因になってしまうのだそうです。体に水分が溜まっていないか最も簡単にわかる方法を尋ねてみたところ、体重を毎日測るようにしたらよい、とのことでした。

また、血液検査の結果(会社の健康診断)は、2年間に渡るデータが記載されていたのですが、これを見て、コレステロール値や血糖値が全く正常値である、ということに対して、ちょっと驚いておられたようです。私の場合、血圧が高かった(160-100くらい)ということ以外には心筋梗塞になる要素が見当たりませんでした。心筋梗塞の原因となるのは心臓の血管内に、酸化されたコレステロールが蓄積してこれによって血管が塞がれて起こるらしいのですが、私の場合、この酸化に対する抵抗力が弱いのかも知れない、というのが先生の見解です。これを防ぐには、緑黄色野菜をふだんから摂取するように心がけるように、とのアドバイスです。ちなみに、心肥大により心房細動を起こしてしまうと血液の凝固を防ぐために、ワーファリンを飲み続けなければならなくなり、そうなると緑黄色野菜との相性が悪い、という問題もあるようです。ですので、水分の補給量の調整は重要であると強く認識しました。

さて、先生の話は1時間以上に及び他の患者さんを待たせているのではないかと心配だったのですが、終わってみると誰も来ておらず、逆に病院経営が成り立たないのではないか、と心配になりました。かなりマニアック?な説明も多く(誰々がコレステロールをマウスに投与したが動脈硬化は見られず、次にコレステロールを酢酸で修飾したところ動脈硬化が見られたことから、動脈硬化が起こるためにはコレステロールが酸化されることが必須と考えられる・・とか)、理解するのには多少の苦労が必要でしたが、近所に頼れる専門医がいるのは心強いことです。