質問してますか

Pecanは集まりに出たときは、必ず何らかの質問をします。会社の会議、外部研修会、学会(知財に来てから全然行ってないけど)、身近なところでは、PTAの集会やマンションの管理組合の総会にいたるまで。質問しないときの方が珍しいくらいです(PTAはあまり深入りすると役員にさせられてしまうので避けたいんですが)。

これは十数年前に会社の研究所に新入社員として配属されたときに、上司から毎月の月例報告会や学会に出るときに、義務づけられていたのが癖になってしまったもの。

最初の1年位は、質問するだけで大緊張でした。発表をだいたい理解してその中でわからない点だけを質問するというのが普通なんでしょうが、Pecanの場合、発表されていることがほとんどわからなくてもとにかく質問すると決めてました。素直すぎて上司のいうことをそのまま実行しようと頑張ってたんですな。ですから、質問のネタを見つけるまで必死で相手の発表を聞く。質問のネタが見つかるとその後は大変。頭の中は発表終了後に自分が質問することでいっぱい。どんな言葉で質問しようかとか、ひたすら脳内シミュレーションを繰り返し、発表はほとんど上の空。で、質問し終わるとどっと疲れて、満足感に浸りつつ座り込む。相手の回答もほとんど耳に入っていません。逆に聞き返されて立ち往生することも。さすがに、そのうちにだんだん慣れてきて、まともなやりとりができるようになってきましたが…。

一時期、Pecanは他の大学に研究生として派遣されていました。研究室の先生や学生さんと毎年春秋2回、応用物理学会という大きな学会の主催する講演会に行って発表したり聴講したりしていました。春季は首都圏、秋季は地方大学で開かれることが多く、5000人以上の参加者がある大きな学会です。特に秋季は地方なので、ホテルの予約が取れなくて苦労したっけ。各サブジェクト毎に教室に分かれて開催されてます。

で、その学会での話なんですが、Pecanがやっていた分野は新しい分野で応用製品は世の中にはなく、それほど研究者も多くない。だいたい固定メンバーが50人くらいで、全体としては200人くらい。発表も約15分から20分くらい。その中で毎日数回、「あの~、○○のPecanと申しますが・・・」、これを年2回欠かさずやっていたものですから、かなり有名人になってしまっていたようです。夜、その地方都市の飲食店で研究室の学生や先生と飲み会をしていたところ、別の座敷から、、「あの~、○○のPecanと申しますが・・・」とイントネーションもそのままに物真似されて爆笑が聞こえてきたこともあります(苦笑)。(○ヤ○ンの○林、覚えとけ、特許いつか潰したるで)

今になってみると、自分が学会で発表したときよりも、質問したとき、それもあまり理解しないまま知ったかぶりで質問して恥ずかしい思いをしたときの方が鮮明に思い出せます。例えば、絶縁体として安定化ジルコニアを使った発表に対して“イオン導電体だから絶縁性はないんじゃないか”などと質問したときのこと…。質問された側も学生さんでイオン導電体の意味がわかっておらず、うまくかみ合いませんでしたし、助け船を出した教授(助手だったかも)もよくわかってない。結局、結論は出なかったのですが、休憩時間の時に、たまたま覗きに来ていた他企業のドクター(大学の先輩)にあれは質問自体がおかしいよ、と間違いを指摘され青くなりました。その後は2度とこの件に関する間違いはしていません(他の件ではともかく)。そういえば、あのとき前記キ○ノ○の○林もニヤニヤしながら首を振ってたっけ。あいつわかってやがったのか、畜生。

ま、個人的怨念はおいておいて。

「質問の場は真剣勝負である」と思っています。質問には、その人の理解度、人格、様々なものが凝縮される。それを発表者が正しく受け止めて返す、そこに発表者のエッセンスが凝縮される。大げさに言えば、魂のやりとりみたいなもの。会社の後輩等も知財協の研修等に行っているようですが、わからなくてもそのまま黙って帰ってくる。これは歯がゆい。会社の金使ってんだろ、などと野暮なことをいうつもりはないですが、自分にとって成長するチャンスをみすみす放棄していると感じるわけです。

最後に、今まで見たうちで記憶に残っている質疑応答。

ある半導体材料関係の国際学会での話ですが、あるロシア人の学者(60歳前くらいのおじさん)が発表したときのこと。日本の質問者から、“それはIIb型のダイヤでの話ですか?”というような質問がありました。ちなみに、ダイヤモンドは含まれる不純物の種類等によってIa,Ib,IIa,IIbに分けられ、IIb型のダイヤとはホウ素を含有するもので青っぽい色を呈し、半導体になります。詳細はこの宝石鑑定士ダンジさんの記事をご覧下さい。

で、その質問をを受けロシア人の学者はすかさず、“IIb or not IIb, that is the question.”と前置きして回答。会場は大爆笑。いうまでもなく、'IIb'と'to be'をかけたわけです。“へぇー、ロシア人でもシェークスピアを読むんだ”と妙なところに感動した記憶が。ま、オヤジギャグですな。