登録率の陥穽

さて、しばらく更新をサボっておりましたが、近況をかねて。

少し前の記事に書いた「36条5項2号」の拒絶理由を受けた2000年出願の案件が登録になりました。明らかな審査官のミスに拘泥せず、「本願の特許請求の範囲に関してご指摘いただいた内容から判断いたしますと、いずれも請求の範囲に記載された事項の内容が不明瞭であるという趣旨であり、現行法の第36条第6項第2号に関する内容に該当すると思料いたします。したがって「第36条第6項の拒絶理由」とさせていただき、以下の通り応答させていただきます」(文面は実際と少し変えています)などと鷹揚に対応したのが、審査官に好感を持って受け止められたのかも(笑)。

ところで、最近、特許庁が審査の滞貨を減らすために、行政指導をして回っています。いつだったか弊社にも長官が来られて大騒ぎでした。で、登録率が低いとか、戻し拒絶率が高いとか、色々と注意を受けるので、トップから対策するように指示が出ます。それはそれで仕方のないことですが、安易に登録率を上げようとするのは考え物です。

基本的にはクレームを減縮していけば、どこかで先行技術と差別できて登録になるポイントは見つかるものです。ただ、そのポイントが実際に事業を行なううえで意味のあるものかどうかが重要です。経験則で言えば、特許性ぎりぎりのところで苦労して通したものの方が有効な特許になる可能性が高いように思います。自社しか使わない、あるいは自社さえも使わない狭い権利範囲の特許をいくらたくさん持っていても、不良資産をたくさん抱えているようなもので意味がありません。拒絶理由を受けたときには、そういった観点から登録率にはこだわらずに有効な範囲での権利化を目指すべきだと思います。