事業戦略/研究開発戦略/知財戦略の三位一体論の実際

最近は、知財の最前線の権利化の仕事(実際の文書作成など)は部下に任せることが多くなり、他部門との交渉・調整の仕事が増えています。個人的には、知財の実務よりも、経営や事業に関する分野への興味が増してきました。

最近、ある事業部の経営戦略会議に出させてもらいました。会議は、事業部トップから社長に対して、今後数年の事業の見通しについて報告し、それに対して、社長からの質問やコメントを受けるという形式で進められました。

大まかに言って、事業の部分は、受注拡大(アプローチしていなかった客先にターゲットを拡げる等)、その受注拡大に応じて製造設備を新規導入し、生産規模を拡大していくといった話がメインでした。また、研究開発の部分は、プロセスの改善により現在製造しているアイテムを低コスト化する話や、さらに高機能化品を開発してタイムリーに製造ラインに投入していくという話などがメインでした。

事業、研究開発のいずれも着実で地に足のついた話をしているとは感じましたが、現在の延長線上での話に終始し、さらに先を見据えた「戦略」に関する話はほとんどなかったのが物足りなく感じた次第です。このような現行品の受注-製造-売上のサイクルや現行品の細かな改善改良のサイクルの中では、知財部の出番もほとんどないというのが正直なところです。もちろん、現行品の細かな改善改良の中にも出願ネタはいろいろあると思いますが、事業へのインパクトはほとんどないに等しいと言って良いと思います。

経済産業省の「知的財産管理指針」において「事業戦略,研究開発戦略,知財戦略の三位一体としての展開」が謳われてから、かなり時間が経ちますが、実際に実施することの難しさを実感しています。社内において、事業戦略の立案者、研究開発戦略の立案者、知財戦略の立案者(私を含む)は、いずれも自分の立場でバラバラに動いていて、自分の裁量の範囲内でストーリーをまとめてしまっているため、スケール感に欠けた小粒の戦略しか作れていないのでしょう。同じような意識を持っている人同士で連帯し、組織の壁を越える動きを取っていく必要を感じています。